絵本:『お月さん舟でおでかけなされ』

『お月さん舟でおでかけなされ』 うた 神沢利子 絵 赤羽末吉
1980年童心社より出版された神沢さんの絵本、絵は赤羽末吉さんという夢のような組み合わせで出版。
「お月さん いくつ
十三 七つ」
子守唄のような詩がたゆたう波の上で舟をこぐお月さんを導いていきます。
年わかいお月さんは、波のあいだにおちた子を、南の海までさがしにいきましたが、みつかりません。 旅からもどったお月さんは、山にのぼりザボンをたべて―。
神沢さんのうたを読んだ赤羽末吉さんは、この話にさまざまな和紙を用いて抽象的な詩の世界を表現しました。
ビジュアル・スト―リーテラーと言われる赤羽さんの唯一の和紙ちぎり絵の絵本ということでも、大変めずらしい絵本です。
安曇野ちひろ美術館で、この絵本の原画をみましたが背中がぞくぞくしました…。
神沢利子さんの展覧会を開く折に、この絵本を担当しまして、好運なことに、当時童心社にいた担当編集の方にインタビューすることができました。
当時はいまよりもっと「絵本はこどものもの」という風潮が強かった時代で、大人のための絵本をつくろうという発想はなかったそうです。そんな中、企画し編集会議を通すのは本当に骨が折れたとか。
でも絵本をつくる作家も絵をつけてくれる画家も、こどもにおもねらずよいものをつくる、ということに賛同したのだと思います。
詩的な情景が大人の心象を描くような複雑さで書かれていながら、芸術作品のように美しい。
この本はもう絶版で入手は古書店などで探すしかないのですが、秀逸な絵本です。
もちろん、韻を踏んだうたが心地よく、子どもにも読んであげてよい本ですので、この機会にぜひ手にとってみてください。
お月さまとは離れてしまいますが、この童心社の企画でつくられた3冊の残り2冊
『林檎の木のうた』神沢利子・文 大島哲以・絵
『いないいないの国』神沢利子・文 斎藤真一・絵
もぜひとも機会があれば合わせて読んでみてください。
3冊とも隠れた名作です!
(なんといっても、画家の顔ぶれがすごすぎます…)
こういう絵本に出会えた時に味わう感動は言い尽くせません。
と、店主べた褒めで(多少我を忘れて)こちらの絵本は今回イチオシです!
興味のある方は9月4日、どうぞ読みにいらしてくださいね。
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