『ぼくのこえがきこえますか』田島征三

よるのいちにち絵本喫茶テーマ絵本より

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1945年8月6日広島に、8月9日長崎にそれぞれ原爆投下。
日本が第二次世界大戦に負けたことを決定的にした瞬間だった。
日本の夏はどうしてもこのことが頭をよぎりますね。
それなのに、私は戦争を直接知りません。
その私が子どもたちに戦争をテーマにした絵本を読む場合どうしたらいいのか悩みます。
「戦争」はいけないことだよ、人が人を殺す非人道的な手段なんだよ。と薄っぺらい説明しかできないのです。
知っているようで知らない「戦争」の実態。
過去に起きた悲劇とともに戦争を語る本はたくさんあって、それらから情報を得ることはできても「戦争とは何か」その問いの答えを持っていないことに驚きます。
遅ればせながら、自分なりの「戦争」を整理して心に留め置くことは必要だと強く思いました。
そうして巡り合った絵本。ああこんな絵本を待っていたと心の底から思いました。

田島征三が「ぼくは50年間、この絵本をつくるためにここまで歩いてきたんだ」という言葉の通り作家渾身の作。

この絵本は戦争に出兵した若い男がこっぱみじんになったあと思念となって、怒り狂う弟や母の悲しみを見、戦争とは何かを感覚的に訴えかけてくる絵本です。

人の死は淡々と表現されている悲劇ながら、もっと本質的な部分で人の想いのうねりをぶつけられたような読後感でした。

戦争を起こすのは大人で、いまの大人は戦争を知りません。
本当に戦争とは何かを説くのは子どもたちではなく、いまの大人たちにこそ必要だと思います。

版元は童心社(日本)、訳林出版社(中国)、四季節出版社(韓国)による共同出版。
日・中・韓平和絵本シリーズ12冊のうちの1冊です。



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