『いつまでも、鰐』 レオポルド ショヴォー (著), 高丘 由宇 (翻訳)

「よるのいちにち絵本喫茶」テーマ本から

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長く生きすぎた鰐がリュウマチになって自ら食料を狩れなくなり、ひ孫の鰐をがぶっと食べ、情を抱いたタコを食べ…を淡々と繰り返し進む話。

邦訳では3度目。山本夏彦さんが「年を経た鰐の話」としたタイトルで日本に初めて紹介し、その後出口裕弘さん、そして本作品。本書は本の構成をショヴォーが考えたものを取り入れ再現した1冊。
右に文章、左にモノトーンのショヴォーによるイラスト。絵がまたもよいです。余白があって、何年生きたかわからない鰐の人生の空白を表現していて、たっぷりと残酷で、あたりまえに繰り返す日々。

昭和14年『都新聞』評によれば、この童話には言葉でする一行の教訓もない―とあります。

確かに、そもそもショヴォーはこの年をとった鰐を物語の上で1人称のかつ思考をもった生き物として登場させるも、鰐ゆえに鰐の本質だけを繰り返し表現した、そのことをむしろ強調した物語と思える、清々しいまでにシュールなお話です。

私の大好きな堀内誠一さんがショヴォーの「年をとった鰐」をたびたび取り上げ、他のショヴォーの作品の翻訳出版に力を注いだとある。興味をそそらないわけにはいかないですよね。
言葉で理解するのではなく、妖しい鰐の魅力をそのまま感じてみてください。



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『THE OLD CROCODILE―年をとった鰐』レオポルド ショヴォー (著), 出口 裕弘 (翻訳), 山村 浩二 | top | 『おばあちゃん ひとり せんそうごっこ』谷川 俊太郎 (著), 三輪 滋 (イラスト)

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