『ねないこ だれだ』せなけいこ

『ねないこ だれだ』せなけいこ

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せなけいこさんの絵本のなかでも、とりわけ有名なこちらの一冊。
表紙はタイトル ” ねないこ だれだ ” に光った目を持つお化けの絵。
とてもインパクトがあります。
そして最初のページが、もうお化けの世界の入り口なのです。
とけいが なります
ボン ボン ボン..........
(影を落とした振り子時計の絵)
こんな じかんに おきてるのは だれだ?
(暗闇に光るオッドアイ)
小さな判型の数ページしかないお話とは思えないほど、導入ページから短い言葉でテンポ良くすすみ、一気にもっていかれる展開には大人になってからもドキドキざわざわしたものです。
ふくろうに みみずく
くろねこ どらねこ
いたずら ねずみ
それとも どろぼう.....
いえ いえ よなかは おばけの じかん
あれ あれ あれれ・・・・
ここで、起きてる女の子が、
おばけにみつかってしまいます。
ドキドキですね!
そしておばけにみつかったら最後、あっという間に・・・?
女の子が最後どうなったかは、絵本を実際に読んでみてください。
(誰もが知っていると思いますけど)
私自身、小学校の低学年のときにこの絵本を両親に買い与えられ、衝撃の展開に怖くてしかた無かった本ですが、不思議と何度も繰り返し読んでしまう、気になる本の一冊でした。
豊かな感性が感じ取る、夜の怖さ。
絵本を通して小さな頃に出会っておいてよいかもなと思います。

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『ねないこ だれだ』せなけいこ



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<DVD>『ねないこ だれだ』せなけいこ



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『はじめてのおつかい』筒井頼子 ぶん 林明子 え

『はじめてのおつかい』筒井頼子 ぶん 林明子 え

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表紙をじっくり。
太陽みたいな笑顔の女の子。
ほっぺが赤くてまだ幼い。

この娘は主人公のみいちゃん。5歳。
弟に飲ませる牛乳を買うようお母さんに頼まれて、生まれて初めておつかいに出かけます。お金を持って、買うものと注意事項を覚えて、一人でお店に行ってくるなんて、みいちゃんはドキドキです。
たった一人きりの心許無さみたいなものが、いつもの道を新鮮にも感じさせるし、怖くも感じさせているみたい。お店についてからは、なかなか気がついてもらえなかったことが、みいちゃんの中でだんだん膨らみ、ようやく気がついてもらえたときに、ポロリぽろりと涙になって溢れ出ました。

家をでてから戻って来るまで、みいちゃんの気持ちの動きが丁寧に描かれていて臨場感があり、読んでいるこちらにもストレートにドキドキが伝わってきます。

牛乳を買ってくる、それだけのことがこんなに大冒険になるのもはじめてのおつかいだから。

誰でもいくつになっても、初めての経験はドキドキしますね。
大人にドキドキすることが減った人は、ぜひみいちゃんに感情移入して、初めてのドキドキ感を味わってくださいね^^

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『はじめてのおつかい』筒井頼子 ぶん 林明子 え






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『わにさんどきっ はいしゃさんどきっ』五味太郎

『わにさんどきっ はいしゃさんどきっ』五味太郎

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まず表紙です。
タイトルにあるとおり、歯医者さんとわにさんのふたり。
二人とも表情が困ったような不安なような・・・。

さて虫歯になったわにさんは、しぶしぶ歯医者さんに行くことに。
一方で、歯医者さんは、遊んでいたけど、わにさんが来たのでしぶしぶ治療にあたります。

二人は椅子に座るところから治療の最中、最後の挨拶に至るまでお互いびくびくドキドキしています。
そしてこの二人がまったく同じ台詞を言っているのに、心境はまるで違うという奇妙なやりとりが、私たち読者をめいっぱい楽しませてくれます。五味太郎さんらしい言葉遊びを満喫できる一冊です!

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『わにさんどきっ はいしゃさんどきっ』五味太郎








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『ドアがあいて・・・』エルンスト ヤンドゥル 作 ノルマン ユンゲ 絵 斎藤洋 訳

『ドアがあいて・・・』エルンスト ヤンドゥル 作 ノルマン ユンゲ 絵 斎藤洋 訳

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表紙を見ただけで、いろいろ想像してしまいます。
暗くて、並んだ椅子に腰掛けているおもちゃ(?)たち。
ケガしているみたいだけど、表情からはわからない子もいる。

さて、中を開くとそこは表紙と同じく、暗くて、しいんとしている待合室のようです。
たぶん、みなじっとおとなしく待っています。

するとドアがあいて、一人でてきた。
コトコトコトコト!

そして、一人ドアの向こうに入って行きます。

どうやら病院みたい?

そうして、一人でてきて、また一人入って・・

暗くてしいんとしている待合室。

ついにたった一人になってしまった。
ドアの向こうで何が行われているのか考えながら待つのはとってもドキドキしますね。

私にも経験があります。
病院の待合室というのは、どうして無駄にドキドキしてしまうんでしょうか。自分の番がくるまで不安と緊張感と疎外感と入り交じったあのまんじりともしない時間。
このお人形たちも一緒。たんたんと粛々とじりじりとドキドキするお話です!

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『ドアがあいて・・・』エルンスト ヤンドゥル 作 ノルマン ユンゲ 絵 斎藤洋 訳



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<大型本>『ドアがあいて・・・』エルンスト ヤンドゥル 作 ノルマン ユンゲ 絵 斎藤洋 訳








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『おなかのすくさんぽ』かたやまけん

『おなかのすくさんぽ』かたやまけん

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ぼくが まっしろい シャツ きて あるいていたら、
どうぶつたちが みずたまりで あそんでいました。

「い、れ、て」とぼくは いいました。
だけど みんな「ウー」なんていって、
みずをバチャ バチャ いわせるばかり。

こうして、男の子はどうぶつ達と一緒に戯れ遊びはじめます。
遊びに夢中になっている、どうぶつ達の躍動感、本能のまま一緒に転げ回る男の子。

生き物のエネルギーを放出しながら、身体を動かし遊ぶことの楽しさを見せられ、遊ぶことって種を越えるのだなあなんて、感心しながら読んでいくと、お話はクマさんの一言で一瞬にして変調します。

くまが こんなことを いいだしたのです。
「なんだか きみ おいしそうだねぇ。
 ちょっとだけ なめて いーい?」

↑お話のトーンが変わりました。

「ほんとうに なめるだけだよ」
とぼくは いいました。

くまは ペロリと いっかい なめました。
それから ペロ ペロ ペロッと さんかい なめると、
すばやく もう いっかい なめました。

↑もうドキドキがとまりませんね。
ハラハラどきどきです。
するとクマくんさらにこんなことを言います。

「ちょっとだけ かんで いーい?」

「ほんとうに ちょっとだけだよ」

さてさてさて、このあと男の子とクマはどうなりましたでしょうか。
そうきたか!という展開でラストを迎えるのですが、そこはぜひぜひ直接絵本を手に取って読んでみて欲しいなと思います。
片山健さんのこのお話の変調展開には脱帽しました。
よいドキドキをありがとうといいたい絵本。オススメです!

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『おなかのすくさんぽ』かたやまけん





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『おふろ』出久根育

『おふろ』出久根育

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表紙からして、ちょっとおかしい。
スーツ着用の赤白ストライプ帽をかぶったおじさんに、驚きを隠せない男の子。

このお話は、「お風呂に一人で入るのやだなあと」ドキドキしている男の子が主人公。でも表紙にもあるように、そろそろとお風呂に入ると、待っていたのは「赤白ストライプ帽をかぶったへんなおじさん」という不安的中のスタート。
いきなり何がなんだかわからない展開ですが、そのあともお風呂のなかで次々起こる異次元ワールドな出来事にハラハラどきどきしてしまいますよ。
なんだか、小1、小4の娘たちには大好評。
荒唐無稽なドキドキの展開に説明は不要ですね。
ぜひ手に取って、その ”ワールド” を楽しんでください。

さて本作、なんと出久根育さんのデビュー作です。
学研さんから2007年に復刊してもらって私たちにも読めるようになりました。

絵が秀逸です。あの素晴らしい中世ヨーロッパ風の幻想的な絵も素敵なのですが、それとはまた違う魅力がありますので、隅々まで見て楽しんでくださいね。

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『おふろ』出久根育







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『もりのおばけ』かたやまけん

『もりのおばけ』かたやまけん

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片山健さんのデビュー作の登場です。
森でいつの間にか弟とはぐれた「ぼく」。
誰もいない森のなかで、「おーい」と呼ぶと「おーい」と言いながら向こうからおばけがやってくる、大きなこだまの固まりがすーっとでてくる様子に、ぼくも読者もドキドキです。
森の影光、おばけの陰影、ぼくの心象とも言える森での出来事を、鉛筆だけで描いたモノクロの世界。
ぼくと一緒にあっという間に引き込まれてしまいますね。
夫の一番の思い出絵本だそうですが、大人になってからもずっと心に残る忘れられない本だったそうです。何年も心に残るというのはすごいですね。
本作は1969年初出で実に46年も前に発表されたものですが、2011年にハードカバーになって復刻されました。
このハードカバーの裏表紙には復刻を記念して新たなカットが追加されていますので、よかったらそちらも見てみてくださいね。

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『もりのおばけ』かたやまけん






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『ピアノはっぴょうかい』みやこしあきこ

『ピアノはっぴょうかい』みやこしあきこ

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主人公ももちゃんの、はじめてのピアノはっぴょうかいの日。
舞台の袖で、緊張しながら出番を待っているももちゃんを見ているとこちらまで手に汗にぎってしまいます。
たった一人でライトのあたったステージにあがり、大勢のお客さんのまえでピアノを弾く、とても緊張してドキドキしますね。

ところが、そんなももちゃんの足元からこねずみが話しかけてきます。

だいじょうぶ だいじょうぶ!

あたしたちもはっぴょうかいしてるの。

ももちゃんも、みにおいでよ

こねずみたちに誘われるまま、小さなドアを開けると、そこには楽しそうにバレエや手品のはっぴょうかいをするこねずみたちの姿。
緊張していたももちゃんも次第に楽しくなって来て・・

ももちゃんの緊張に最初ハラハラするのですが、そんなももちゃんをリラックスさせてくれるこねずみたちとのお話。最後は優しい気持ちになれますよ。


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『ピアノはっぴょうかい』みやこしあきこ




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『トリゴラス』長谷川集平 作

『トリゴラス』長谷川集平 作

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トリゴラスは、一人の少年が主人公。あるとき少年はびゅわんびゅわんと風が吹く中、怪獣トリゴラスが襲い来る音を聞きます。
少年はお父さん、お母さんを呼ぶけれどかけあってくれません。
そして怪獣トリゴラスは少年の大切な女の子かおるちゃんの部屋に向かって行くのです。

少年特有の内向的でセンシティブな気持ちと暴力的な衝動が突如制御不能になったかのような緊張感。短い物語の中で少年のアンビバレントな感情が伝わってきます。

長谷川さんの作品はどれも、主人公の心象風景やモノローグがものすごく魅力的で、あっと言う間にお話に引き込まれてしまいますよ。

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『トリゴラス』長谷川集平 作







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『わゴムはどこまでのびるかしら?』マイク・サーラーぶん ジェリー・ジョイナーえ きしだえりこ やく

『わゴムはどこまでのびるかしら?』マイク・サーラーぶん ジェリー・ジョイナーえ きしだえりこ やく

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タイトルを読んだだけで、いやな予感がしますね。
頭の中では果てしなく伸びるゴムが浮かんでしまって、すでにドキドキ…。

主人公の男の子。わゴムはどこまでのびるかな?って試してみることに。
片方をベッドに引っ掛けて、部屋の外へ、汽車にも乗るし、飛行機にも乗ってどんどん伸ばして、どんどん遠くへ。

ページをめくるたび、まだ引っ張るの?っていう緊迫感。
ゴムもお話も引っ張る引っ張る。

そして伸びる距離とは裏腹に、楽しくてワクワクする男の子。

わゴムはいったいどうなるでしょう?

ハラハラドキドキワクワクする楽しい絵本。ラストはぜひ手にとって読んでみてくださいね。

原題は『How far will a rubber band stretch?』


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『わゴムはどこまでのびるかしら?』マイク・サーラーぶん ジェリー・ジョイナーえ きしだえりこ やく





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『綱渡りの男』モーディカイ・ガースティン 作 川本 三郎 訳

『綱渡りの男』モーディカイ・ガースティン 作 川本 三郎 訳

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まず表紙です。何の知識もなくても、このアングルそしてタイトルにある「綱渡り」これだけで、なんだかとんでもないことをしでかしてる話だぞ、と想像がつきますよね。

本作はタイトルにもあるとおり、綱渡りをする男の話なのですが、渡った場所がすごいのです。
舞台はニューヨークマンハッタンにある大きなツインタワー。
フランス人の大道芸人フィリップ・プティが建設中の2つの高層ビルの間、地上400メートルの高さに鉄製のワイヤーを張り、1時間にも渡って綱渡りをするお話です。
そんなばかなと思うかもしれませんね。
創作のお話でもヒヤヒヤドキドキする設定です。
でも実はこの絵本、実在する男の実在したお話です。

いまはなき世界貿易センターのツインタワーを見つめていたフィリップは、あそこで綱渡りをしたい!ボールが3つあったらお手玉するように、高いビルが2つあったらその間を綱渡りしたいと思い実行に移します。

8メートルものバランス用棒を持ち、綱の上を行ったり来たり、歩いて踊って、ついには綱の上に寝ころんでしまいます。空を浮遊しているような開放感と何ものにも囚われず、このうえない自由を謳歌するかのようなフィリップの空中パフォーマンス。絵本とわかっていながら、胸が高鳴る高揚を押さえずにはいられませんでした^^

当時、頭上を歩くフィリップを見上げたアメリカの市民のみなさんはどんな気持ちで見ていたのかな。そんなことも想像して、いまはないワールド・トレード・センターを思い出してしまいました。

とってもドキドキ度高めの絵本ですよ。ぜひ手に取ってみてくださいね。


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『綱渡りの男』モーディカイ・ガースティン 作 川本 三郎 訳




20:01 | 絵本1000冊 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑

『えきのひ』加藤久二生

『えきのひ』加藤久二生

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ある日、お母さんと一緒に大きな駅にやってきた2人の姉弟。駅は賑やかで、人も物もいっぱい。あちこち気になるものがたくさんあって、姉弟がふと気がついたとき、お母さんの姿が見えなくなっていました。

おかーさあーん‼︎

どうしよう ドウシヨ
どうしよう ドウシヨ

見知らぬ場所、広くて大きすぎる駅の構内。
姉弟の焦る気持ち、不安な気持ちがページいっぱいに描かれて、こちらもドキドキしてしまいます。

お母さんと言うセーフティゾーンから、ぽーんと放り出されてしまったときの2人は、急に周りの何もかもがよそよそしくなって、オロオロするばかり。
この感じは自分にも経験があります。

でも、この姉弟はすごいんですね。
泣いて立ち止まらず、前向きなエネルギーに溢れています。

迷子だ、これはやばいぞ、と思いながら読んでいたら、最後はこの姉弟に感心してしまいました。

お話の序盤はドキドキするけど、なんだか少し可笑しくて、暖かい気持ちになれる本です。

名前もなく、薄い印象で描かれた姉弟。読み手がこの姉弟に自分を反映しやすいように思います。
このお話を読みながら、自分の迷子事件を久しぶりに思い出しました(*^^*)

加藤さんと言えば、「つみきのいえ」や「或る旅人の日記」などのアニメーション映画の監督さんとして知られています。
絵本版『つみきのいえ』に続き、手にとった2冊目の絵本。
穏やかで優しいです。
まだ読んだことのない人は、ぜひ加藤ワールドに触れてみてくださいね。

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『えきのひ』加藤久二生






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『バスをおりたら・・・』小泉るみ子 作・絵

『バスをおりたら・・・』小泉るみ子 作・絵

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表紙の女の子、長い影が印象的ですね。
いつも長い長い距離を歩いて学校まで登下校している女の子。
嵐の日だって雨の日だって歩いて行きます。
行きはお姉ちゃんや友達が一緒だから大丈夫。
でも帰りはいつもひとりきり。
リコーダーを吹きながら帰ります。
お母さんは、町ではこんなに大きなはたけはできないからね。
いいうんどうだよ、がんばれ がんばれと言います。
でもある夏の暑い日、とても歩いて帰れないと思った女の子はとうとうバスに乗りました。
夢にまでみたバス。バスは速くて楽ちんで、とても嬉しそうな女の子。でもしばらくするとなんだか様子が違ってきました。いつも歩かない坂をバスはぐんぐん登り、ついにいつも家から見上げている炭坑の町まできてしまったのでした・・。
不慣れなバス、見知らぬ場所、家からはとても遠い場所。
わたし、炭坑の町まできちゃったんだ・・・。
早く家に帰らなくっちゃと、その場所から逃げるようにお母さんのいる家に向かって走り出した女の子。
遠くに来てしまったドキドキが手に取るように伝わってきます。
女の子にとって非日常の世界は心細くて不安なもの。それを詩的な絵で丁寧に描かれた本作。
お家に帰り着くまでの、ぞわぞわするドキドキ感。
ぜひ少女と一緒に味わってみてください。

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『バスをおりたら・・・』小泉るみ子 作・絵





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『ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ』いわむらかずお

『ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ』いわむらかずお

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スケッチをしながらのんびりと旅をしていた僕は、ローカル線の最終列車に乗り込んだ。
ぽかぽか暖かい座席に誘われてうとうと眠った僕が、ふと目を覚ますと列車のなかには一人きり。
他には誰もいないようです。

ゴトトン ゴットン
ゴトトン ゴットン

ぼんやりと窓ガラスに移った眠たげな顔を見ていると、誰もいないと思っていたれっしゃのなかで、ぼそぼそと話し声が聞こえてきたのです。

ドキドキしますね!
さて、この僕がみたのは4匹のねずみでした。
こっそり見てから、息をひそめて話に聞き耳を立てるのですが、このさいしゅうれっしゃ、このあとイノシシ、チャボ、クジャク、クマ、サル、キツネと次々動物達が乗ってきます。
そして、話に花を咲かせる動物達。話の内容は人間がいかに悪い奴らか、どんな目にあってきたのかというもの。人に対する恨みつらみでいきりたっていきます。
そして、れっしゃに乗っている人間は僕だけ。

読んでいる私もドキドキしてきて、だんだん背水の陣になっていく気分です。同乗している僕はどんな気分でしょう!?

さてこの僕ですが、物語の終盤に怪しい様子をサルに気取られてしまいます。

動物達が敵と見なしている人間だってわかってしまったら、動く密室で僕はどうなってしまうのでしょうか。

もうハラハラですね。
最後の最後、お話のクライマックスはぜひ手にとっても読んで欲しいなと思います。

絵本の作りが面白いです。
見開きの絵のみ、見開きのテキストだけという順番で構成されているので、不思議な余白をつくってくれていますよ。
オススメです^^

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『ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ』いわむらかずお




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『漂流物』デイヴィッド・ウィーズナー

『漂流物』デイヴィッド・ウィーズナー

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真っ赤な背景にレンズ。
インパクトのある表紙です。
よーく見ると、赤い魚の体と目なんですね。

海辺で遊ぶ1人の少年が主人公。物語はその少年のところに、カメラが流れ着くところから始まります。
カメラを拾った少年は、好奇心から写真を現像します。

写真に写し出された世界は実に神秘的で不思議な世界でした。このカメラはどこを旅して何を見てきたのか、想像するだけでワクワクしますね。

このお話は、テキストがありません。ページをめくって絵だけで進むお話です。
どんなお話なのかは、読み手が想像力を膨らませ、絵から自由に読み取ってよい作品です。

私はカメラの果てしない漂流に思いを馳せ、数奇な縁を取り持つ少年にワクワクドキドキしました。

みなさんはどう感じるでしょうか。
ぜひ手にとってみてくださいね。

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『漂流物』デイヴィッド・ウィーズナー





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『あけるな』谷川 俊太郎 作 安野 光雅 絵

『あけるな』谷川 俊太郎 作 安野 光雅 絵

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谷川俊太郎さんと安野光雅さん。
二人とも大好きな作家さんです。
谷川俊太郎さんの言葉には、言葉そのものに意思があるような感覚を受けますね。この本も言葉に主人がいないんですよね。いえ、いるのかもしれませんが、正体はわからないし自由に解釈していいのかもしれないです。
見てください。表紙にはドア。そして「あけるな」の文字。
最初からもう戸惑いを隠せません。
あけるなと言われても、あけるしかないじゃないですか。
でめくると、「あけるなったら」の文字。
さらにページをめくると「あけるとたいへん」になっている。
「あけてはいけない」「あけるなといってるのに」と続き、続く忠告を無視して進むんですから、ドキドキがエスカレートしてしまいます。
さて、あけてはいけない扉をずっと行くと、そこはとても不思議な世界が広がっています。自由に読み取ることのできる余白がいっぱいの世界です。
ここはどこなのか、説明するのはナンセンスだと思います。
肉体から離れて、思考と現実の狭間を旅するような絵本とも言えそうです。
ドアというのはしみじみと不思議なメタファーだと思います。
あちらとこちらの境界の役割だったり、内側と外側の通路だったり。
ドキドキしながら、次元を旅してみてくださいね^^

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『あけるな』谷川 俊太郎 作 安野 光雅 絵



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『うごいちゃだめっ』エリカ シルヴァマン ぶん  S.D. シンドラー え  せな あいこ やく

『うごいちゃだめっ』エリカ シルヴァマン ぶん  S.D. シンドラー え  せな あいこ やく

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なんでも競り合うアヒルとがちょうのふたり。でも泳ぎも、飛ぶことも、がちょうの方が一枚上手なんですね。そこで最後にアヒルが持ちかけたのは「うごいちゃだめ」という競い合い。負け続きのアヒルはがちょうが気になって仕方ありませんが、がちょうはしれっと動きません。はちが来ても、うさぎが来ても、2人はじっと動かない。

そこにお腹をすかせたキツネが現れて、一勝負は命がけのドキドキ展開に。
動かない獲物をまんまと巣に運ぶキツネですが、アヒルはもうがちょうが動き出すのをいまかいまかと待っています。キツネはほくほくしたり顔で2匹を料理するために準備中。。

がちょう vs アヒルの勝負に、がちょう&アヒル vs キツネの勝負さていかに?です。

アヒルの心情がだだ漏れで、面白いです。そのハラハラっぷりをどうぞ楽しんでくださいね^^

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『うごいちゃだめっ』エリカ シルヴァマン ぶん S.D. シンドラー え せな あいこ やく





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『みるなのへや』広松由希子 文 片山健 絵

『みるなのへや』広松由希子 文 片山健 絵

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ディテールは少し違うのですが、『みるなのくら』と同じ昔話です。
道に迷った若者がお世話になった家人に「出かけるので、最後のへやは見てはならない」と言われるけれど、我慢できず開けてしまいます。
次々開けては目の前に広がる不思議で素晴らしい景色はたちまち若者を魅了し、次から次へとへやをのぞいていくことになります。
開けないで思いながら開けるんだろうなとも思って開け進めていく、若者の気持ちに思いを重ねてみてください。
広松さんの柔らかく平易な日本語は、すうっと入り込んできて、不思議な出来事に隠された怖さが感じられません。そして、その麻薬ともいうようなへやに広がる景色を片山健さんは色彩豊かに描ききってくださいました。
『みるなのくら』とぜひ読み比べてみて欲しい作品です。

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『みるなのへや』広松由希子 文 片山健 絵





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『みらなのくら』おざわとしお 再話 赤羽末吉 画

『みらなのくら』おざわとしお 再話 赤羽末吉 画

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道に迷った若者がお世話になった家の女人に「出かけるので、最後のくらは見てはならない」と言われるけれど、我慢できず開けてしまうお話です。
見るなと言われると見たくなってしまうのはどうしてなんでしょうか。
次々開けるくらが素晴らしい景色を見せてくれることも手伝って、欲求に負けて開けてしまう様は、人間には禁忌を犯す衝動が本質的にあるのかな、なんて考えてしまいます。
開けないで開けないでと思いながらドキドキと読み進んで、男の気持ちに思いを重ねてみてくださいね。
おざわさんの端的で美しい日本語に赤羽末吉さんの素晴らしい絵。
「みるなのくら」は赤羽末吉さんの絵が最初にあり、そこへ小沢さんがテキストをつけ、洗練された場面作りになっています。

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『みるなのくら』おざわとしお 再話 赤羽末吉 画







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『どうぶつえん物語』 あべ弘士

よるのいちにち絵本喫茶 テーマ絵本より

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大好きな絵本作家 あべ弘士さんの絵本のうち、少し大人向けにオススメしたいのはこちら
これは北海道の旭山動物園に1972年から25年間飼育係として働いていたあべさんの1994年頃の動物園日誌です。

日誌というよりは、エッセイ。
毎日移り変わる季節のなかの動物たちとの交歓が、あべさんのユーモアと愛に満ちた言葉で描かれている。
飼育係という仕事のきわどさと常に生死にかかわる現場でさえも、あべさんの視点は温かい。

この絵本を読むと、じわっと心が温かくなる。

例えば、私の大好きなゴリラのゴンタはこんなゴリラ


--引用
空気ひんやりの日、ゴリラに哲学ならう

ススキの穂が大好きで、コオロギが好きで、ゆうやけが好きで、
いつも ものしずかで
そんな ゴリラのゴンタの、おおきな背中が ぼくは好きだ
となりにならんで、夕日のしずむまで みていた
--

そのゴンタがある日倒れる

--
ハクチョウがわたってきた日、ゴリラのゴンタ 脳出血で たおれる

230kg
8人ではこぶ
”しっかりしろ!”と”今、さめたらどうしよう”が
あたまのなかを かけめぐる
ちかいはずの病院が、 やけに とおかった
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この2つ読んだだけでも、ぐぐっときますよね。
もちろん、あべさんの絵学生き生きとした動物の絵も魅力的なので、こどもたちに読んでもらっても楽しめる絵本に間違いはないのですが、醍醐味はあべさんの人間性と感性がこぼれでてくるような文章にあって、短文ながら滋味深い言葉には心に沁み入るものがありました。


あべさんが長年お勤めになった旭山動物園は3年前に映画になっています。
この映画であべ弘士さんを柄本明さんが演じています。
行動展示、ピンポイントガイド、夜の動物園など動物園再生に行った数々のアイデア。
行ったことないのですが一度は行きたい動物園ですね。


旭山動物園物語
http://www.kadokawa-pictures.jp/official/asahiyamazoo/






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